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2025.07.29

統合型リゾート 大阪IRの可能性:アジアのゲーミング(カジノを含む)市場に見る大阪ベイエリアの商機

大阪・関西万博の開催地として注目を集める『夢洲(ゆめしま)』。そのすぐ隣では、統合型リゾート ‐ 大阪IRの建設が進められています。大阪ベイリアのメガプロジェクト、大阪IR開業の2030年を見据え、夢洲に隣接する大型複合施設ATCでも新たなブルーオーシャンであるゲーミング(カジノを含む)関連企業の誘致に向けた取り組みを進めています。

ATCは今後、統合型リゾート(IR)における地域連携の中核拠点としての役割が期待される中、アジアのゲーミング産業の最新動向をつかみ、ゲーミング関連企業との接点を探るため、フィリピン・マニラで開催された『SiGMA Asia 2025』に参加しました。会場や出展ブース、カンファレンスで見えた大阪の統合型リゾートの現在地と、今後の展望について考察します。

「SiGMA Asia 2025」はアジアのギャンブル/カジノを含むゲーミング産業のビジネス促進を図る国際展示会です。コンセプトは「EAST MEETS WEST」。規制当局、オペレーター、アフィリエイト、スタートアップ、投資家、テックイノベーターなど、多様で影響力のある関係者が集まりました。

「ゲーミング」という言葉は本来、娯楽としてのゲーム全般を広く指します。ビデオゲーム、ボードゲーム、eスポーツから、バカラなどの確率要素や金銭を伴うギャンブルまでを含みます。ビジネスの文脈では、“gaming” は中立的な業界用語として広く使われ、法的に認可された枠組みの中で責任ある運営がなされているカジノ産業も広義のゲーミングに含まれます。

本展示会では、スロットマシンの最新仕様はもちろん、日本のカジノ管理委員会が重視するKYC(取引時確認)やAML(マネー・ローンダリング対策)を支える各種ソリューション、さらに決済システムとの連携技術などを間近で見ることができました。出展者のうち半数以上はiGaming(オンラインゲーミング)関連企業で、日本ではオンラインカジノが禁止されているものの、世界のギャンブル市場における技術トレンドを垣間見ることができます。

イベント開始から夕方まで途切れることなくパネルディスカッションが行われ、活発な議論が続きました。テーマは「アジア市場のトレンド」「変化する規制への対応」「市場参入と文化理解」など、事業者が直面する具体的な課題とその解決策を取り上げたものから「次のアジアのラスベガスはどこか?」といった刺激的な話題まで、幅広く展開されました。

注目したいのは、アジア各地で加速する統合型リゾート開発と、次の進出先として”タイ”に強い関心が寄せられている点です。カジノ禁止から規制へと移行しつつある、タイ市場への期待が繰り返し、取り上げられました。残念ながら大阪の統合型リゾートに関する言及はあまりありませんでした。

またアジア全体で過熱するカジノを含む統合型リゾート産業において、専門性と経験を備えたグローバルな労働力の確保についても多く議論されました。英語を公用語とするフィリピンの人材が注目され、今後の人材獲得競争の激化が示唆されました。大阪IRが直面する人材面での課題とも、深く関わる重要なテーマとなっていました。

複数の出展企業にヒアリングを行った結果、大阪IRに対する国内外の認識にはやや温度差があることが感じられました。一部の関係者からは、開業までのスケジュールや制度設計の見通しが不透明な点について慎重な姿勢が見受けられ、大阪での事業展開に向けた判断に影響を与えている可能性もあるようです。一方で、日本市場への長期的な期待感は根強く、環境が整えば前向きに関与したいという声も複数ありました。カジノ関連制度の整備が進むことで改めて注目が高まる可能性を感じました。

私はこれまでゲーミング産業に直接のバックグラウンドはありませんが、知れば知るほど、その奥深さと広範囲なネットワークに驚かされます。日本にはまだ存在しない産業が、まさにこれから立ち上がろうとしています。このアーリーステージにおいて私たちができることは──自ら海外に足を運び、現地で感じ、学び、つながることだと確信しました。次は8月にバンコクで開催されるSPiCE Southeast Asia 2025に参加します。また皆さまにご報告しますのでお楽しみに。

                             

                               

                               

ATC 統合型リゾート(IR)調整マネージャー 井上雄二:大阪・関西万博においては、パビリオンの建設・運営に関わる多数の海外企業のオフィス誘致、契約管理、英語でのコミュニケーションを担当。大阪ベイエリアMICE事務局長も兼務し、地域の国際MICE誘致や調整業務にも携わる。